東須磨に「ボックサン」という神戸を代表する洋菓子の本店があります。
ボックサンの福原社長には菓子製造だけでなく、経営ノウハウも教えてもらっている超重要な師匠のひとりです。
自社の社員かどうか関係なしに、バンバン技を伝授して経営を教える・・・。
こういう文化が神戸の洋菓子界にはあると言います。
まさに福原社長そのものという感じです。
神戸の洋菓子が発展するわけですよね。
(和も負けません!)
そんなボックサンの福原社長に、かねてから疑問だったことを尋ねたことがあります。
店名の由来です。
「社長、ボックサンというのはどういう意味ですか?」
すると、
「分からん」
「え、分からんのですか?」
「そんなんどうでもええことやねん」
社長自ら店名の意味が分からない。
また、どうでもいい。
意表をついた回答に、私はちょっとうろたえました。が、3代にも渡って受け継がれた名店ですから、起源が忘れられても特に問題ないというか、むしろ分からないくらいが魅力かも、と思いました。
いつか天ペロもそんなふうになりたいと思いますが、今はまだそんな段階ではありません。
天ペロとは「天麩羅」の語源であるポルトガル語の「tempero」に当て字したものです。
天麩羅も天ペロも同じく揚げ物。そこから引用しました。
変わった店名ですが、これには「変わった店名にしよう」という意図がありました。
開業直前の2007年ごろ、私はこのように考えていました。
・いかにも老舗っていう感じの店名ではダメやな。
・どっから見ても新参者やからな。
・嘘はついたらアカンな。
・逆に、おもろい店名がいいな。
・変わった店名にしよう。
・でも、やってることは超ストイック、そんな店にしたらええねん。
・何でもありや。
・良い意味でお客さんを裏切っていこう。
じゃあ、どうしよう・・・。
そんなことを考えながら、語源を辿ってみたところ「tempero」という単語が出てきたという流れですね。ここに縁起の良い「天」という漢字と、ペロちゃんキャンディにあやかって「ペロ」を付けて「天ペロ」・・・よし、これにしよう。
こういった流れです。
・・深く考えたというよりは、直感でさくっと決めました。
しかし、ごく最近、寺院「temple」の参道という意味もあるじゃないかと指摘されてハッと気がつきました。
期せずして天ペロには「揚げる」と「須磨寺」という二重の意味が含まれていたわけです。
嬉しいです笑。
今思えば、この店名以外はなかったということですね。
法人名は株式会社神戸天ペロですが、なんとなく「神戸」とつけたのも良かったです。
須磨は神戸の「すみっこ」というのが変化して「すま」となった等と言われますが、神戸の魅力は何もポートタワーだけではありません。神戸は様々な要素が絡み合う複雑な街です。
「寺」やら「かりんとう饅頭」やら「源平合戦」やら、およそ神戸のイメージ戦略とはまったく噛み合わない部分。
だからこそ面白い。
神戸の「すみっこ」ということで、神戸のなかでは主軸ではないのかもしれません。が、プロ野球でも優勝するチームは8番バッターなんかが強力だったりするもの。すみっこが突き抜ければ重層的な神戸の魅力にばんばん資することができるということです。
当初は違和感のある「天ペロ」という店名でしたが、もうすっかり地域になじんでしまいました。
もはや愛着しかありません。
いつか神戸と言えば須磨寺、須磨寺といえば天ペロ、須磨寺と言えば神戸、そのような図式に発展していけるように日々努めたいものです。
人生いろいろありますが、明るく、楽しく進みましょう!
天を向き、須磨寺名物かりんとう饅頭をペロっと食べる。
さすれば運気も揚がり、きっといいことがあります。
皆さまの幸せと笑顔のために須磨寺参道の一角にて暖簾をかけてお待ちしております。